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避難に関する行政からの情報
災害発生の危険性が高まった際には避難を呼びかける情報が自治体から発令されることになっています(詳しくはこちらの記事参照)。災害対策のマニュアルやBCPでは行政からの情報を利用して対応や避難をスタートさせることにしている場合もあるでしょう。しかし、行政からの避難に関する情報だけで万全かというとそうとも言えません。なぜでしょうか?この記事ではその理由をお伝えしていきたいと思います。
行政からだけの情報に頼る問題点
自治体から発表される避難に関する情報には、次の様な問題点が隠れている場合があります。
1. タイムリーに発表されるとは限らない
避難勧告などが発表されるタイミングが災害発生の直前になったり、災害が発生した後になったりという事例は数多くあります。
情報を出すのは結局人なので、災害対応に慣れていない自治体や危機感が低い自治体の場合は住民への情報提供が後手になってしまう可能性があります。
自治体の首長や幹部職員、防災担当職員などで防災対応の専門的な教育を十分に受けた人も稀です。災害対応に当たる自治体のスタッフ数も限られているかもしれません。
自治体は気象台や河川管理者などからホットラインなどでアドバイスを受けながら避難に関する情報を発表できる様にはなってきていますが、相当の混乱の中で発表されている(あるいは発表が見送られる)場合もあることでしょう。
避難勧告などはいつもタイムリーに発表されるものではないと割り切っておき、自ら防災情報を使って必要な判断を下していく方が確実です。
2. 即座に伝達されるとは限らない
いざ避難勧告などが発表され、屋外に設置された防災無線のスピーカーで情報が放送されても、雨や風が強い場合は聞こえないという問題があります。
地域の連絡網や広報車などによる呼びかけ、インターネットの避難情報サイト、あるいは自治体によってはメール配信など、複数のルートで情報が伝えられるようにはなっていますが、発表からのタイムラグはどの方法でも多かれ少なかれ生じます。つまり、自治体からの情報が発表されるとすぐに対象区域の全員に広まるというわけではなく、徐々に情報を受けた人が増えていくという過程を経ます。災害の可能性が目前に迫った時に自治体が情報を出しても、情報を得た時にはさらに時間が経過しており、避難などがすでに難しくなっている可能性もあります。
早めに行動する必要があるのであれば、行政からの避難情報が入る前から動いておいた方が時間的な面で大きなメリットがあります。
3. 自治体の情報発信の仕方が弱い点
自治体から避難に関する情報が出される時によくあるパターンは、対象地区、発表時間、発表した情報とその理由を簡潔に示す例です。下記の例は高知県宿毛市のものです。平成30年7月豪雨(西日本豪雨)で宿毛市に対して大雨の特別警報が発表される50 分前に市全域に避難指示が出ています。
この情報を改めてよく見ていただきたいのですが、この情報だけで皆さんは次の点を把握できるでしょうか?
- いつ頃危ないか(いつまでに避難をしなければならないか)
- どんな被害が生じうるか
- どこが実際に危ないか
避難を考える上で、これらの情報は大変貴重なものです。しかし、そうしたポイントはなかなか自治体からの情報に現れません。
先ほど例として取り上げた高知県宿毛市の事例を見ても、「自治体からの補足情報」として「土砂災害警戒情報発表のため」や「急激な大雨のため」というコメントがあるのみです。いつまでに避難する必要があり、どんな被害が見込まれ、どこが危ないかは不明瞭です。他の防災情報まで含めて自ら監視していると、上の3つの問いに対する答えを得ることができます。自治体が発表する情報だけに頼ることなく意思決定ができるようにしておくことが重要です。
まとめ
ここまで見てきたように、自治体からの情報は様々な問題を抱えている場合があります。「レベル3」や「レベル4」という形で情報が発表されるようになっても、タイミングや情報発信の問題は当分残っていく可能性があります。災害時には自分で広い意味の防災情報(こちらです)を確認しておき、必要であれば自治体の情報を待たずに対応をするとしておいた方がより安全です。「当てにしていた避難に関する情報が出なかったので逃げ遅れて被災した」ということがないように、自治体だけの情報ではなく複数の視点で災害発生の危険性を判断し自ら行動できるようにしておきましょう。