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水害対策マニュアルの要は基準作り
水害対策マニュアルはいわば防災対策の設計図です。世の中には「設計ミス」という言葉があるように、設計を誤ってしまうと後から事故が発生してしまいます。
さて、水害対策マニュアルを作る際に、いざという時の防災行動に支障が出ないように特に注意をしなければならないのは、行動の基準づくりの部分です。
基準に適した防災情報
行動の基準としては、多くの場合で防災情報が使われます。防災情報に基づいて非常対応に当たる職員を参集したり、参集する職員の規模を決めたり、避難などの防災行動を取ったりする決断をします。
防災情報を実際に使えるようになっていなければ基準が絵に描いた餅になるという問題はここではおいておきますが、まずもって重要なことは行動のトリガーに適した防災情報が設定されているかという点です。
行動の基準の部分で問題を抱えた水害対策マニュアルは、一見完成度が高いように見えても「設計ミス」が隠れているのと同じで、いざという時に問題が顕在化する可能性があります。
水害対策マニュアルの問題点
しかし残念ながら、インターネットで検索して見つかる水害対策マニュアルの導入例や国や都道府県、業界団体などが作成した水害対策マニュアルのテンプレートを見ていくと、防災情報の利用という面で次のような疑問符がつくものが非常に多く見受けられます。
- 防災情報全体の中でごく限られた範囲の情報しか使われない。判断に適したもっと良い情報があるのに使われていない
- 自らの防災行動を行うための時間を考慮して基準が作られているように見受けられない
- 危機的な状況に至ったことを示す情報を使って行動をしようとしている(危機的な状況に至る前に他の防災情報の中から手がかりを得ることができるが、それを利用するような形でマニュアル化されていない)
- 具体的な防災情報が指定されておらず漠然とした基準(例:「危険が迫った時」など)となっている
防災情報を適切に位置づけることは実際の防災対応の準備として非常に重要です。「設計ミス」を抱えた水害対策マニュアルは有害になりうるということを覚えておいてください。