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情報の対象は一部の土砂災害のみ
土砂災害の危険性が高まる時には土砂災害警戒情報や大雨警報(土砂災害)の危険度分布でその危険性が確認できる仕組みが整っています。
しかし、これらの情報が予測の対象とする土砂災害は土石流や集中的に発生する急傾斜地崩壊(がけ崩れ)に限られており、技術的に予測が困難とされる斜面の深層崩壊、山体の崩壊、地すべり等は、土砂災害警戒情報の発表対象とはされていません(出典はこちら)。土砂災害警戒情報を見ていれば土砂災害の可能性が全てわかるというわけではないことをまずは認識しておいてください。

(気象庁のホームページより転載)
情報でカバーされている土砂災害
ではどういった特徴を持った災害が土砂災害警戒情報でカバーされているのでしょうか?土砂災害警戒情報は土石流と急傾斜地崩壊を対象としています。それぞれの特徴は次のとおりです。
土石流
- 山腹、川底の石や土砂が長雨や集中豪雨などによって一気に下流へと押し流されるもの
- その流れの速さは規模によって異なるものの、時速20~40kmという速度で一瞬のうちに人家や畑などを壊滅させる(国土交通省のページ(こちら)より引用)

国土交通省ホームページより転載
(こちら)
急傾斜地崩壊(がけ崩れ)
- 地中にしみ込んだ水分が土の抵抗力を弱め、雨や地震などの影響によって急激に斜面が崩れ落ちることを言う
- がけ崩れは、突然起きる
- 人家の近くで起きると逃げ遅れる人も多く死者の割合も高い(国土交通省のページ(こちら)より転載)

国土交通省ホームページより転載
(こちら)
情報でカバーされていない土砂災害
一方、深層崩壊、山体の崩壊、地すべりは土砂災害警戒情報の対象外です。このうち、深層崩壊と地すべりについて以下特徴をご紹介します。
深層崩壊
- 山や崖の表層が崩壊して発生する土砂災害よりも深い部分で発生するため、表土層だけでなく深層の地盤までもが土砂となって押し寄せる比較的規模の大きな崩壊現象のこと
- 斜面を構成する土塊は崩壊と同時にバラバラになって移動するか、 あるいは原形を留めてすべり始めた後にバラバラになる
- 土砂は高速で移動する
- 土砂の大部分は崩壊範囲の外へ移動する場合が多い(=影響が生じる範囲が広がりを持っている)(出典はこちら)

国土交通省ホームページより転載
(こちら)
地すべり
- 斜面の一部あるいは全部が地下水の影響と重力によってゆっくりと斜面下方に移動する現象
- 移動する土砂の量が多いため、甚大な被害が発生する
- 一旦動き出すとこれを完全に停止させることは非常に困難
- 日本では地質的にぜい弱であることに加えて梅雨あるいは台風などの豪雨により毎年各地で地すべりが発生している(出典はこちら)

国土交通省ホームページより転載
(こちら)
まとめ
土砂災害警戒情報などが対象とするもの、対象としないものをまとめると次の通りとなります。
予測対象 | 対象外 |
土石流 急傾斜地崩壊(がけ崩れ) | 深層崩壊 山体の崩壊 地すべりなど |
深層崩壊は土石流・がけ崩れに比べると発生頻度は低いと言われていますが(出典はこちら)、崩壊の規模が大きいことから一箇所での被害が甚大になったり、土砂ダムを形成することなどが多いため下流域に対しても脅威となるという特徴もあります(出典はこちら)。深層崩壊については雨量やマスコミ報道などが手がかりにできるので、それらをうまく利用しながら警戒に当たると良いでしょう。
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