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深層崩壊は土砂災害警戒情報の対象外
別の記事(こちらです)でまとめたとおり、地下深い岩盤ごと崩れ落ちてくる深層崩壊という現象は土砂災害警戒情報では捉えることができません。予測対象の範囲外だからです。
しかし全てお手上げというわけではありません。技術的に予測が困難なため土砂災害警戒情報のように場所を特定しての警戒の呼びかけはできませんが、定性的に危険性が高まった状態であることは降り始めからの雨量やマスコミ報道を通じてわかる場合があります。
この記事では深層崩壊の危険性の高まりを掴む方法をまとめてみたいと思います。
雨量を目安に考える
過去に発生した深層崩壊と発生時までの雨量を分析した資料を見ると、どのレベルを超えると危険性が出てくるかということが定性的に見えてきます。
降り始めからの雨量で400ミリ
国土交通省国土技術政策総合研究所作成の資料が次のものです(出典はこちら)。横軸は降り始めから深層崩壊が発生した時までの雨量、縦軸は発生した時の時間雨量です。横軸上に記載されている事例は雨が止んだ後にも発生していることを示します。
深層崩壊が起こり始めた累加雨量の最小値は1961年の長野県大西山で発生した事例や2003年に熊本県集川で発生した事例が参考になります。それらの事例を見るとだいたい累加雨量で400ミリに達しており、逆に累加雨量400ミリ以下では発生した事例がありません。このため累加雨量400ミリというレベルを一つの閾値として考えます。この閾値を超えて雨がまとまっていくのであれば深層崩壊の可能性も出てくると大まかに理解することができます。
降り始めからの雨量で600ミリ以上
別の研究(こちら)では、地域の複数箇所で深層崩壊が起こり得る雨量の目安が述べられています。それによると48時間雨量(2日間の雨量)で600ミリ以上である場合には複数の深層崩壊が同時発生した事例が多いことがわかります。
雨の降り方による影響もある
なお、雨量が多ければどこでも発生するという訳ではなく、もともと深層崩壊が発生しやすい場所の方がリスクは高いと言えるでしょう。また、降水量だけではなく、雨の降り方が散発的ではなく集中的にまとまった方が地盤が緩みやすいという下記のような指摘もあります(こちらの資料参照)。
累加で400ミリや600ミリを超えても深層崩壊が発生しないことはありますが、あくまで結果論です。大雨が進行する中では「この降り方では深層崩壊は発生しないはず」というように捉えるのではなく、「いつ発生してもおかしくない」という安全側に考えて警戒をしたいものです。
マスコミ報道を手がかりにする
雨量を見て自己判断をしていく方法以外にも、マスコミ報道などから危険性を察知することもできます。
例えば2019年7月2日20時21分に配信された「九州、一日で1カ月分超す大雨の恐れ 土砂災害警戒を」と題した朝日新聞デジタルの記事では、深層崩壊の危険性が気象庁のコメントとして次のように紹介されています。
同庁は「これまでに降った場所は少しの雨でも土砂災害が発生しやすい。(地下深い岩盤ごと崩れる)『深層崩壊』など大規模な災害の可能性もある」と呼びかけている。 |
深層崩壊というキーワードがマスコミ報道などで現れるようになった場合、そうした事象が起こり得る状況に直面していると判断すると良いでしょう。
まとめ
最初に述べた通り、深層崩壊については、土砂災害警戒情報などでピンポイントに場所をあげて災害の危険性を伝えられることはできません。このため雨量や気象や防災の専門家がマスコミ経由で発信する定性的な情報にも注意しておくことで危機の高まりを把握していきましょう。