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防災対策について考える
災害リスクを知る(こちら)ことを通じて、地域で発生しうる災害像や皆さん自身の脆弱性、浸水時の被害の想定などを行ってきました。ここからは被害を減らしていく方法を検討していく方法を考えていきましょう。
日本で発生する水害の特徴
まず前提条件として認識しておいてもらいたいことが1点あります。
それは、日本で発生する水害は非常に展開が早いので、気象台や河川管理者、自治体から防災情報が出たときにはすでに災害発生が目前に迫っていることがあるという点です。
災害が差し迫った時には、警報や水位に関する予報、土砂災害警戒情報などの防災情報を通じて住民等の避難のために一定のリードタイムを提供するという仕組みは整っています。
しかし、そうした情報が意図されたタイミングで発表できた場合でもリードタイムは1時間から数時間程度しかありません(実際の例はこちら)。実際には意図したリードタイム提供ができないこともあります。例えば警報などの発表が遅れたり、実際の雨量が予報よりも多く急激に状況が悪化したりした場合です。そうした場合には情報自体もまさに分刻みで悪くなっていき(例えば危険度分布など)、リードタイムはあってないようなものになりかねません。
そのような現実があるので、「災害の発生に結びつく可能性を伝える高レベルの防災情報が出てから行動すれば難を逃れることができる」という前提で防災対策を考えることは実はとても危険なことです。
「川ではなく滝」
京都大学名誉教授の河田惠昭氏の「日本沈没」(朝日新書)には次のようにあります。
「わが国では、山に降った雨が川に流れ込めば、3日以内にすべて海に流れ出る。急流なのである。これが中国の長江や黄河の場合、3か月である。明治初期にやってきたオランダのお雇い技師たちは、日本の川をみて、『これは川ではなく滝だ』といったと言われる。」(「日本沈没」、P. 95)
滝とはうまい表現だと思います。中小河川はもちろん、大河川でも大雨が降るとすぐに増水し、極めて短時間のうちに危険な状態に直面するのが日本の川です。増水まで時間的な余裕が日単位、月単位で取れればその間に対策を十分打つことができますが、数時間から数十時間の間に対応が迫られるとうことを念頭に置いておかなければなりません。
元から対策ができている状態が理想
防災対策としてまず最初に考えてもらいたいことは、非常時に何もできなくても水害に対して対策ができている状態にいかに近づけられるかという視点で対策を練ることです。前述の通り、防災情報が伝えるリードタイムはとても短いことがあるので、情報の有無や人の判断の有無に関わらず対策が仕組みとして構築されてればそれに勝るものはありません。例えば次のような対策です。
- 浸水や土砂災害の発生する可能性がある場所からの移転
- 敷地などのかさ上げ
- 1Fのピロディー化、主要機能を2F以上に設置
- 非常用発電機の2F以上への設置
- 自動で起動する止水板の設置
- サーバーや重要書類などの浸水防災対策(高所への設置)
- 防水壁・防潮壁の設置 など
何もしなくても災害に対して対策が取れているというのが理想ですが、実際には難しい部分も数多くあることでしょう。
そうした場合に活きてくるのが防災情報を利用した判断です。警報や河川、避難に関する情報だけではなく、広く防災情報を見ていく中でいち早く異変に気付き、皆さんが必要とするリードタイムを確保し、被害軽減行動を取ることができるようになっていかなければなりません。
▶︎参考記事:防災情報とは