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大雨の警戒レベル
大雨の警戒レベルが2019年から発表されるようになりました。例えば大雨警報(土砂災害)の危険度分布(こちら)では、1km四方ごとに土砂災害の危険の高まりが色別で表示されます。黄色、赤色、薄紫色、紫色といった具合に危険度が上がり、これを見ればどこが危険か一目瞭然でわかるという仕組みです。
色別の意味
危険度分布の色が意味するところは次の表のとおりです。濃い紫色が出ている状況はすでに危険であるため、薄紫色が出たら速やかに少しでも安全な場所への避難が必要とされています。また、薄紫色はこの先2時間以内に紫色の状態になりうることを指しています。しかし実際の大雨ではこうして想定されたとおりには事態が展開しません。
実際の例
実際の例を見てみましょう。こちらは2019年7月22日未明に鹿児島県薩摩川内市付近で発表されていた大雨警報(土砂災害)の危険度分布から作成したものです。1コマ動くたびに10分が経過しています。
この例では最初は黄色しかありませんでしたが、あっという間に赤色が広がり、午前2時から3時台には薄紫色や紫色のエリアが一気に広がりました。赤色から紫色にひとっ飛びで変わっていったエリアもあります。その後4時過ぎには薄紫色や紫色の箇所もなくなり大雨は峠を超えました。
情報を使うときの前提
この例だけを見ても明らかなように、全ては雨の降り方次第であるので、赤→薄紫→紫というように順を追って段階的に情報が発表されていくわけではありません。また、紫色になるまでのリードタイムが丸々2時間ある訳ではなく、もっと短い時間か、あるいはリードタイム自体がない場合もあります(赤から紫に変わった場所がその例です)。
これだけ展開が早いと自治体からの避難の呼びかけも追いつきませんでした。レベル4相当の情報(災害発生の恐れ)が発表されたのですが、市からは避難勧告や避難指示(緊急)などの情報はありませんでした。
大雨の警戒レベルで動くことの難しさ
避難を開始するタイミングとして大雨警報(土砂災害)の危険度分布を使うように呼びかけられますが、ここまで展開が早いと実際に避難することは果たして可能でしょうか?
薄紫色で避難し、紫色になる前に避難を完了させておくというのは理論上の話です。展開が早い雨の場合はその通りに動くことはとても難しい面があります。これが現実であり、警戒レベルを利用した防災対策の限界でもあるので、こうした状況が起こりうることを踏まえて私たちは何ができるかを考えていかなければなりません。