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アメダス観測網とは
気象ニュースなどで「気象庁の観測によると○○で1時間に○ミリ」という報道を耳にされると思います。これは、気象庁の自動観測網であるアメダスによって捕捉された雨量です。雨量を観測しているアメダスは全国各地に約1300箇所あり、約17kmに一つの割合で設置されている計算になります(気象庁のページ(こちら)より抜粋)。このアメダス観測網によって捉えられた雨量は最も短い単位で10分間雨量として配信され一般に利用されます。
アメダスの10分間雨量の見方
10分間雨量は1時間雨量や24時間雨量に比べてあまり馴染みがないかもしれませんが、気象庁の高解像度降水ナウキャスト(こちら)でアメダスを表示させるオプションを選ぶと確認できます。高解像度降水ナウキャストの下の部分にあるアメダスボタンを押してみましょう。
これはアメダスボタンを押す前の状態です。画面上には雨量情報は現れていません。
アメダスボタンを選択すると、アメダスで観測された直近の10分間雨量が数字として現れます。
アメダスで捕捉されない雨雲もある
では大雨の時にアメダスのデータだけを見ていれば雨量が分かるのでしょうか?答えはNoです。アメダスは全国的に見れば非常に高密度に設置されていますが、アメダスの観測地点と別のアメダスの観測地点の間で雨雲が発達してしまうことがあるためです。
アメダスがちょうどないところで大雨となった事例をもとに、アメダスの観測網だけでは分からない時の雨量の把握法を説明していきます。
この例は群馬県内で大雨となった事例です。前橋市北部から北東方向に伸びるライン状の雨雲が発達しています。赤で囲ったものがアメダスの観測地点であり、ちょうどその観測網から離れた地点が大雨となっていました。
上の図の時間帯から2時間分の雨雲の動きをコマ送りにしたのが次の図です。非常に発達した雨雲が同じような形でしばらく継続し、徐々に場所を変えながらライン状の形が崩れ衰退していったことが分かります。肝心のアメダスの雨量計の上には雨雲がかからなかったため、0ミリという表示が続くことに注目してください。
都道府県の雨量計も見る
こうした場合に代替手段としてぜひ確認したい情報は、都道府県が観測した雨量が一般公開されていないかということです。都道府県の観測データが公開されている場合、アメダスとは異なる場所により細かく設置されていることが期待できます。都道府県の防災担当部局、河川管理の部局、土砂災害の担当部局などがそうしたページを整備している場合があります。
「群馬県 雨量情報」とインターネット検索をしてみると、案の定該当するページが出てきました。「群馬県水位雨量情報システム」と呼ばれるページです(こちら)。
都道府県の雨量情報で見える大雨
動画や画像で取り上げてきた群馬県の大雨ですが、群馬県水位雨量システムでは地上観測データをしっかり捉えていました。
雨雲がかからなかかった場所は県のシステムで観測された数値を見ても大した雨ではありません。前橋の雨量は午前4時までの累積雨量でも11ミリにすぎませんでした。
前橋から北北西に位置する富士見の観測データを見てみましょう。ちょうど活発な雨雲がかかっていたと思われる場所です。データを見ると午前2時までの1時間に99ミリの大雨となっていたことが分かりました。午前4時までの累積雨量は193ミリに達しています。
富士見から北東に位置する赤城山のデータは国の観測データですが、ここでも多い時には時間50ミリから80ミリクラスの雨が降り続き、午前4時までの累積雨量が194ミリに達したことが分かります。
県のデータを見たことで、先ほど動画で見た雨雲は1時間雨量的には80ミリ前後から100ミリ前後を降らせ、累積雨量では200ミリ前後に達したと判断することができます。アメダスだけを見ていたらこの情報は得ることができませんでした。
まとめ
今回ご紹介したような局地的な雨の降り方は全国どこでも起こり得ます。特殊なケースというわけではありません。アメダスの観測値を見ているだけでは実際に地上でどの程度雨が降っているか分からないことがあるため、雨量の情報を掴む際にはぜひ都道府県のデータも含めて見るように心がけてください。