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自らの脆弱性・抵抗力の洗い出し
水害向けBCPや水害対応マニュアルなどを作成する際には洪水や土砂災害、高潮などのハザードマップでリスクを確認する作業を行いますが、それと同時に取り組む必要があることは、災害に対してどのような弱さ(脆弱性)を自社が抱えているかの確認です。
洪水が発生して同じレベルの床上浸水が発生しても、A社では被害は甚大になることもあれば、同業他社のB社の場合は被害は軽微であることがあります。外から加えられた力(この場合は洪水)は同じでも、抵抗力のある・なしで被害という結果が変わるからです。
では皆さんの場合は抵抗力があるでしょうか?あるいは水害に対して特別な脆弱性を抱えているのでしょうか?その自らに関する部分を明らかにして対策を練っていくことが実効性を持った水害対策を行う上で非常に重要となります。
チェックリストを使ってみる
災害に対しての脆弱性や抵抗力を何もないところから自己評価するというのは難しいので、すでに作成されたチェックリストを使うのも良い方法です。
そこで今回は、国土交通省九州地方整備局武雄河川事務所が作成した「水害BCP作成の手引き」(こちら)という冊子の中で紹介されたチェックリストをご紹介したいと思います。
この「自己診断チェックリスト」は2種類あり、一つは製造業・輸送業向け、もう一つは医療・福祉向けです。それぞれカバーされている項目は次のとおりです。
自己診断チェックリスト(製造業・輸送業)の項目
■建物の安全性 ・建物の被害想定(耐水化対策の現状) ・復旧時の建物利用について ■設備・装備面での対応 ・停電時のセキュリティー ・長期停電を考慮した電源・燃料の確保 ・断水時の空調施設稼動用水源の確保 ・データバックアップセンターの有無 ・重要な製造用機器の点検・修理 ・個人情報等の重要データ(電子・紙両方)の管理 ・社内システムの点検・復旧 ■組織体制 ・非常時の作業人員の確保 ・災害対策本部の設置 ・教育・訓練の実施の有無(頻度) ■規律・運用・広報 ・緊急時の報告方法に関する取り決めの有無 ・緊急時対応に関するルール・マニュアルの有無 ・緊急時対応業務の浸透性 ・緊急時に組織として社会的責任を果たせるか否か ■財務・契約面での対応 ・災害時の保険契約の有無 ・サプライチェーンとの災害時の損失に関する協定の締結状況 ■周辺環境の変化(異常)への対応 ・流通網被害を受けた場合の被害情報収集・伝達と流通網の確保 |
自己診断チェックリスト(医療・福祉)の項目
■建物の安全性 ・建物の被害想定(耐水化対策の現状) ・復旧時の建物利用について ■設備・装備面での対応 ・停電時のセキュリティー ・長期停電を考慮した電源・燃料の確保 ・断水時の空調施設稼動用水源の確保 ・データバックアップセンターの有無 ・重要な機器の点検・修理 ・カルテ等の重要データ(電子・紙両方)の管理 ・劇薬・親水性薬品および危険物の管理 ・施設内ネットワークシステムの点検・復旧 ■組織体制 ・非常時の作業人員の確保 ・災害対策本部の設置 ・教育・訓練の実施の有無(頻度) ■規律・運用・広報 ・緊急時の報告方法に関する取り決めの有無 ・緊急時対応に関するルール・マニュアルの有無 ・緊急時対応業務の浸透性 ・緊急時に組織として社会的責任を果たせるか否か ■財務・契約面での対応 ・災害時の保険契約の有無 ・サプライチェーンとの災害時の損失に関する協定の締結状況 ■周辺環境の変化(異常)への対応 ・道路被害を受けた場合の被害情報収集・伝達と流通網の確保 |
2つの自己診断チェックリストとも、項目について単純にYes/Noで答える形ではなく、それぞれ具体的な対策が取られているかをチェックする事ができます。このため、何が足りていないのか・何をすべきなのかの参考とすることが可能です。
まとめ
今回は武雄河川事務所の作成したチェックリストをご紹介しました。それぞれの業種別に追加検討が必要な項目などもあると思いますが、検討の取り掛かりとして参考にしてみてはいかがでしょうか。
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