こんにちは。気象とコミュニケーションデザインの渡邉俊幸です。
先日、お世話になっているリスク対策.comさんが実施した「組織における風水害対策調査」の分析結果報告会に参加しました。
特に興味深かったのは、事例として取り上げられていた大企業や中小企業の中には、災害が目に見えてから対応をしたという例があったことです。
例えば、
- 目の前を流れる小さな川の橋が濁流で流された時から対応をスタートさせた酒造メーカー
- 水が押し寄せてくると分かった段階でPCの本体だけでも救おうと上階へ投げたメーカー。切羽詰まっていたのでモニターは諦め、コードも引きちぎって対応したそうです
- 特別警報が出ていても特に対応ができず外水氾濫の被害を受けた食品関連業者。後から考えれば社用車や商品を別のところに移しておけばよかったといいます
などなどです。
水害はどのようなタイプのものでも発災に至るまでの過程があります。その過程が長いもの、短いものという違いはありますが、いずれも情報の中には何らかの異常シグナルが現れます。
先ほどの企業は残念ながらそうしたシグナルは使えていません。危機が目前に迫り、まさに実体をもった段階になってから対応をスタートさせたのは改善の余地ありと報告を聞きながら感じました。
さて、報告会の中でもう一点注意を引いたのは、風水害想定のBCP訓練の困難さです。「想定を作るのが難しい」という点が少なくない企業にとって足かせになっていました。
この結果は自分にとって意外でした。しかし考えてみれば訓練用のシナリオや想定は確かに難しいものがありますね。
「何でもいいから手を動かせ」というタイプの訓練でよしとするのであれば、避難訓練や土のう作りの訓練といったことになっていくでしょう。
しかしもっと高度な訓練を行おうと思ったら、どんなリスクがあるか、どういった被害を被るか、対応に当たるマンパワーは足りる想定で訓練するべきか、人が手薄になるような平日夜間・休日など悪条件を踏まえて訓練した方がいいかといったことまで総合的に考えていかなければなりません。
なかなか大変です。
これは自分が自治体で防災訓練を企画したり、オーストラリアで架空のサイクロンを想定して訓練を行ったりした経験などが役に立つかも・・・ということで、アンケート報告会の後に頭をひねって作成したのが、水害対応訓練を企画するときのポイントをまとめたこのシートです。
これはまだver 1.0です。分かりにくいところや足りてない点なども踏まえて、これからどんどんバージョンアップしていくつもりです。
水害対応の訓練と言う分野は自分のサービズの中でこれまで力をいれていなかったフィールドですが、訓練がしっかりしたものになれば実際に大雨になった時の対応力もあがりますね。今後、訓練関連のサービスメニューや記事をどんどん充実させていこうと思います。
水害対応訓練を企画される団体や企業の方に上のシートの印刷版をお配りしています。詳細はこちらをご確認ください。