洪水対策である水防活動を規定する法律が水防法です。水防法とは、「洪水又は高潮に際し、水災を警戒し、防ぎょし、及びこれによる被害を軽減し、もって公共の安全を保持する」ことを目的とした法律であり、大きな水害が発生した後などの節目ごとに改正が行われてきました。
その改正ごとに何が拡充され、どの方向性が示されたかについて国が資料としてまとめていますので、ここでご紹介します。
近年の水防法改正の契機となったのは2000年9月に発生した東海豪雨です。翌2001年には50年近く触られていなかった水防法に手が加えられ、洪水予報河川を対象に浸水想定区域の指定が始まり、ハザードマップの元となる浸水想定のデータが拡充されるようになりました。
ハザードマップを巡っては2015年がもう一つの大きな節目です。この年の改正で、想定される最大規模の降雨を前提としたいわば「最悪ケース」の浸水想定を作る方向が打ち出されました。
洪水のハザードマップが計画規模のものと想定最大規模のものの2種類あるのは、2000年代に先行して整備された浸水想定区域図が堤防整備の目標となる雨量(計画規模)を前提としていたためです。想定最大規模の浸水想定区域図は前述のとおり、2015年以降の動きとなります。
そして2021年も水害リスク情報にとって大きな節目となりそうです。2020年11月時点の報道によると、中小河川の浸水想定区域の指定を義務付けるよう、水防法などの改正案提出が予定されているとのことです。
最初は大河川を対象とした浸水想定区域図ですが、その後中規模河川の一部も対象に加えられ、洪水の想定シナリオも最悪ケースがプラスされました。この20年で大→中→最悪と来て、ようやくその他の中小河川のリスクも伝えられるようになる見込みというわけです。