風水害に備えて防災訓練などを企画する際、訓練の前提となるシナリオをどう組めば良いのかで戸惑う場合が少なくありません。今回の記事では訓練の企画に役立つ視点をいくつかご紹介していきます。
この記事の目次
1. どのような水害を対象にするか
一言で水害といっても規模は大・中・小あります。このため、どのレベルの水害を前提として訓練を行うか最初にはっきりさせておいた方が良いでしょう。次の4つのうち、何を対象に訓練を行うのか考えてみてください。
- 内水氾濫
- 中小河川の外水氾濫
- 大河川の外水氾濫
- 複合的なシナリオ(内水氾濫+外水氾濫、土砂災害、風害などとの組みああせ)
大河川の外水氾濫の場合は、ハザードマップで表された浸水深をそのまま利用するか、どこか特定の箇所が決壊したことを想定するのかで訓練の内容も異なってきます。例えば距離の離れたところで決壊した場合には、決壊が起こってから水が押し寄せるまでにある程度時間がある可能性もあります。
2. どのような被害想定で訓練を行うか
1で選んだ想定を元に、被害を考えていきましょう。次の点などを具体的に検討しておくと訓練も実践的になります。
- 浸水の深さ(最大で○メートル)
- 浸水の継続時間(一時的か長時間か)
- 道路や交通の寸断状況
- 電気、ガス、水道、電話・インターネット、食糧確保、トイレ利用等の可否
職場で訓練を行う場合は、浸水等により業務に見込まれる影響も考えておきたいところです。例えば車両の水没や重要書類、IT機器への被害、商品や在庫などへの被害の有無です(参考記事:浸水による店舗や工場への影響)。
3. 洪水による被害が発生するまでの時間
水害によっては被害が発生するまでにあまりリードタイムが取れないものもあります(内水氾濫や中小河川の洪水)。逆に台風などでは比較的早い段階から情報が提供されるので、対応する時間も確保できる可能性があります。訓練シナリオでは、被害発生に至るまでの想定時間としてどの程度を見込むのか考えておきましょう。過去の災害時の記録などが想定を検討する際に役立ちます。
4. 事前に入手できる情報
水害が発生するまでに何の情報が入手できそうか洗い出しておくのもシナリオ作りに役立つでしょう。入手できる情報が整理できたら、だいたいどの程度の段階でそうした情報が出されるのかを調べ、シナリオ上の時間軸に当てはめていきます。展開が早いタイプの水害の場合は情報が手に入らないこともあります。
5. 災害対応の要員の参集状況
夜間や休日などの場合、災害対応に当たる職員等が集まれないこともあります。道路冠水や内水氾濫、激しく降る雨、暴風、交通機関の計画運休や運行停止なども参集状況に影響することでしょう。災害対応の要員が十分参集できるか、それとも少ない人数で対応をせざるを得ないかなどをも訓練の想定条件として加えておきましょう。
これらのことを手がかりとしてシナリオをくんでいけば、訓練はより臨場感の高い、実践的なものになると思います。さらに高度な訓練にする場合は、意思決定者と連絡がつかない場合や事前情報に気づかず災害に巻き込まれる場合、広域的な災害で外部からの応援が難しい場合、予報に反して状況が悪化した場合などといった不利な条件を加えていくとよいでしょう。
【お知らせ】
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